正智深谷MF近藤七音、「パスの選手」からもう一段の進化へ。結果にこだわる10番が8年ぶりの選手権勝利もたらす決勝ゴール!

因縁であり、きっかけを与えてくれた場所でもあるNack5スタジアムで成長を示す決勝ゴール。10番MF近藤七音(3年)のゴールが正智深谷に8年ぶりとなる選手権での勝利をもたらした。

1-1で迎えた後半13分、正智深谷は左サイドでDF鹿倉颯太(3年)がボールを持つと、MF吉田匠吾(3年)がポケットを取る動き。それと同時に空いたマイナスの位置に近藤が走り込む。

「本当はもうちょっと右の良いコースを狙おうとしていたんですけど、ちょっとダフっちゃって(苦笑)。キーパーに行っちゃったんですけど、良い感じに落ちて入ったので良かったです」

吉田のパスを呼び込むと右足一閃。シュートは思い描いていた軌道ではなかったというが、気持ちの乗ったシュートがキーパーの手を弾きネットに吸い込まれた。そしてこのゴールが決勝弾に。全国でのゴールは「違いますね(笑)。観衆が多いので気持ちよかったです」と振り返った。

「自分はパスの選手なので、ああいうところで本当はパスを選択しちゃうんですけど、やっぱりこういう舞台では狙っていかないといけないなっていうのは試合前から意識していて、「自分が結果を残す」っていう気持ちは強かったです」。そう言うように近藤は本来「パスの選手」だ。

FC多摩出身で同クラブの2年先輩であるU-19日本代表MF大関友翔(川崎)に憧れる司令塔は、4月の関東大会予選でその大関から学び取ったという相手の「逆を取るパス」でチームのアタックを牽引。決勝の成徳深谷戦も随所で意表を突くパスを見せてタイトル奪取に貢献した。

しかし、一方でインターハイ予選は準決勝で西武台に敗れ、夏の全国出場とはならなかった。「西武台戦はやっぱり自分個人としての実力がまだ足りなかった。やっぱり個人突破っていうのは自分のポジションでは大事になってくると思うし、パスのアシストとか、そういう「パスの選手」ではあるんですけど、やっぱりそれだけじゃ昌平とか西武台には勝てないと思って」。この夏は個人での突破とシュートを決めることにこだわり、「より怖い選手になる」ことを意識。夏場は練習試合も多かった中で多少強引でもチャレンジし、「自分でも成長できたかな」と話していた。

迎えた選手権予選はチームとしては8年ぶりの選手権出場を叶えることができたが、個人としては「県予選では自分は何もできなくて、結果を残していなかった」。インハイのリベンジを果たすはずだったNack5で行われた準決勝は出場停止で外から見守ることしかできなかった。それだけに「インターハイで西武台の準決勝で負けたとき、それが1年を通して一番悔しかったので、この舞台で借りを返せたのは嬉しかったです」。悔しい夏から成長したMFは笑顔を見せた。

また、得点以外でも持ち味の背後やサイドの選手を活かすパス。強度の高く来る相手にも「相手の矢印が強く来るのはわかっていた。自分が足下で受けるっていうよりは一個相手の背後のギャップで受けられて、そこで受けられれば相手が一個遅れてくるので、その矢印をうまく使って逆を取ろうと思っていた」。そこでの駆け引きやライン間に入っていく動きなども随所で見せた。

「今年はスーパーな選手がいない」と言われているが、試合を経て勝ち上がりながら成長していけばそういった存在にもなり得るカード。2回戦はプレミアWESTの東福岡となったが、「プレミアリーグは最高峰ですし、その相手にどれくらい自分たちのサッカーができるかが楽しみ」と話す。「パスの選手」からもう一段階の進化を遂げた近藤が次も攻撃を牽引しチームを勝たせる。

石黒登(取材・文)