昌平MF長璃喜、1年生アタッカーが起死回生ゴールでチームを救う! 兄・準喜と目指す最初で最後の選手権の高み「今年マジで頑張りたいです」

1年生アタッカーが起死回生のゴールでチームを救った。昌平のU-16日本代表MF長璃喜(1年)は0-1で迎えた後半40+4分、DF田中瞭生(3年)の右クロスをヘディングで沈めると同時に終了のホイッスルの鳴る劇的同点弾。その後のPK戦勝利に繋がるビッグプレーだった。

ハーフタイム明けからだった1回戦の奈良育英(奈良)戦に続き、2回戦の米子北(鳥取)戦の出番も後半から。1点ビハインドの31分、MF土谷飛雅(3年)と代わってピッチに立った。

村松明人監督は中との関係を持てる土谷とワイドの仕掛けで勝負できる長とで迷ったというが、時間や最後の交代枠だったこともあり、1年生MFの起用を決断。チームが右からの攻めに傾倒していたこともあり、プレー回数はそれほど多くはなかったが、左サイドで爪を研ぎ続けた。

すると提示されたアディショナルタイムを経過した44分だ。田中から絶好のクロスが上がると、166cmと小柄なMFはジャンプ一番ヘディングで押し込んだ。チームメイトや指揮官も含めまったくイメージがないというヘディングでのゴールは本人にとっても「びっくり」だったようだ。

「ヘディングはまったく練習してないです。アップでもヘディングをやるんですけど、あまり自分はやらないです(笑)。あまり自分自身覚えていなくて、本当に身体が勝手に動いたという感じ」。ゴールの瞬間はスタンドからの声援もわからないほど頭の中が真っ白になっていたというが、「とりあえず、でもめっちゃ嬉しかったです」と仲間たちと喜びを分かち合った殊勲のアタッカーは劇的勝利を生んだ自らの結果よりも「チームとして勝てたことが一番嬉しい」と語った。

県予選初戦となった準々決勝の細田学院戦でもチームの窮地を救う決勝弾。本大会1回戦の奈良育英戦でもゴールを決めるなど、ここ一番での得点力が光る。村松監督も「やっぱり点を取る力、ドリブルだったりシュートだったり、そういうものは誰にもないものを持っている」と話す。

ゲーム主将のDF佐怒賀大門(3年)は「いや、もう本当にしびれました。県予選でも細田学園戦で逆転弾決めてくれて、本当に持ってる、じゃないですよね。もう実力ですよね。途中から来てくれると、1年生ですけど本当に頼もしいです。やっぱり流れも変えてくれますし、ゴールも決めてくれるので、「ここからいけるな」っていう、ちょっとギアも上がります」と信頼を語る。

10番をつけるMF長準喜(3年)は実兄だ。ゴール後には抱擁を交わすシーンも。準喜は「正直あんなことしたくないんですけどね(笑)」と照れくさそうにしながら、「本当にあのままホイッスルが鳴って、試合終了して負けていたら、本当にもう後悔が残る選手権だったので。本当にあの試合で終わらなくてよかったですし、弟にも感謝してます」と本音も口に。それを伝え聞いた璃喜は「次は(兄にも)頑張ってほしいですね」といたずらな笑みで辛口のエールを送った。

準喜が3年、璃喜が1年ということもあり、ともに選手権の舞台に立てるのは今年だけ。だからこそ「今年マジで頑張りたいです」。兄とともに目指す、最初で最後の選手権で高みを目指す。

石黒登(取材・文)