FC東京内定MF荒井悠汰弾で先制も、昌平は前橋育英に敗れ16強 インハイ3位&プレミア昇格と歴史刻むも日本一には届かず、またひとつ変化の時か

第101回全国高校サッカー選手権の3回戦が1月2日に行われ、埼玉県代表の昌平は前橋育英(群馬)と対戦し、前半早々にMF荒井悠汰(3年)のゴールで先制したものの、その後に2点を奪われ、1-2と逆転負け。日本一を目指した戦いは、志し半ばのベスト16で幕を閉じた。

藤島崇之監督は「前橋育英さんはプレスの速さや局面の粘り強さが非常に素晴らしかった。我々が足りないものを全部見せていただいた。そういったゲームになったのは残念ですけども、我々も学びながら成長を遂げなければいけないと思っているので、それを次の糧にしたい」と話した。

インターハイ覇者の前橋育英と同3位の昌平の一戦。浦和駒場スタジアムには15,372人の観客が集まるなど、注目のほどがうかがえた。昌平は初戦からメンバーを1人変え、スピードと背後を取る動きに長けるFW上野旭陽(3年)が今大会初出場。するとこの起用がいきなりハマる。

前半3分、MF土谷飛雅(2年)が出したロングフィードに上野が抜け出すとシュートは前に出た相手GKにブロックされたが、こぼれ球を荒井が左足のロングシュートで決めて先制した。

しかし13分、中央のエリアをMF小池直矢(3年)とのパス交換で抜け出した坂戸ディプロマッツ出身のFW山本颯太(3年)に今大会3点目を決められ、同点とされると流れを渡した。

特に前橋育英の出足の速いプレスに苦戦。「好守の切り替えの速さは我々も想定しながらやっていたんですけども、もうちょっとダイレクト、ツータッチで、パパッと渡しながら行く話はした中で、思いのほか、そこが選手の距離感だったりが、うまくいかなかった部分があった。もう一つ外してという所は狙ってはいたんですけど」(監督)。昌平の武器である土谷とMF長順喜(2年)のところでいつものように外して前進することができず。逆にMF根津元輝(3年/1FC川越水上公園)、MF徳永涼(3年)の超高校級のボランチコンビにクオリティーで上回られた。

昌平はGK上林真斗(3年)の攻守などもあり1-1で折り返したが、後半10分に根津のサイドチェンジを右SBの井上駿也真(3年/坂戸ディプロマッツ)がワンタッチで前戦のフリーエリアに絶妙なパス。小池のクロスを最後はMF青柳龍次郎(3年)に沈められ逆転を許した。

昌平はHT明けからFW小田晄平(2年)を投入。後半22分には荒井の浮き球のスルーパスに小田が完璧なタイミングで抜け出し、ループ気味に狙ったがシュートはわずかに枠の左に。終盤に荒井が狙ったFKも枠を捉えきることができなかった。この日のシュートは3本。「(前半は)中盤が重たくて、自分もそうでしたが受け手が少なかったり、ボールを奪ってもなかなか相手のプレスが早くて、なかなか繋げないで、なかなかうまくいかなくて、後半監督に言われて修正できたんですけど、もっと前半から出てきたんじゃないかと思います」(荒井)。後半は自分たちのペースをつかみかけたところもあっただけに、やや弱気な選択が多かった前半の出来が重く響いた。また、ロングボールが増えたことで、今季の武器のひとつであるCKは0本に終わった。

昌平の出来が悪かったこともあった中で前橋育英に攻守で一段階上回られたのもまた事実。「攻守の切り替えの部分の強度が高まると、ボールを動かすというスタンス一つだけではなかなか難しい部分もあり、そこでスピーディーに行く状況なのか、それを上回るスキルで行くのか、その辺はちょっと整理しながらですけど、逆に展開という部分をより重視しながらやっていくことで見出せる部分もあるかもしれないですし、いろんなバリエーションを持っていくのが次への課題」(監督)。技術や個という言葉がフィーチャーされる昌平だが、全国の壁を痛感する度にマイナーチェンジを繰り返している。ここでまたひとつ、変化の時を迎えているのかもしれない。

その中で今年はインターハイ3位、埼玉高体連として初のプレミアリーグ昇格を果たすなど、後輩たちに残したものも大きい。藤島監督も「新たな歴史を作ってくれたことに関しては、津久井を中心に頑張っていたことに本当に感謝していますし、ただその中で実質、勝負のところで負けてしまったという部分の悔しさを1、2年生がさらに感じてもらわなければいけないと思います」と話す。ロッカールームではあえて厳しい言葉をかけたというDF津久井佳祐(3年)主将も「プレミアでの経験を糧に来年は日本一を取って借りを返して欲しい」とエールを送った。

前橋育英・山田耕介監督も最高峰のプレミアリーグの強度の中で1年間揉まれたことが良い経験になったと話していた。昌平もプレミアで揉まれる中でその答えを探す1年となりそうだ。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平 1-2 前橋育英
1(前半)1
0(後半)1