[総体]昌平MF山口豪太、「気持ちには引力がある」。強い意志が引き寄せた全国決定弾!試合後にはこみ上げるものも
悪い流れを断ち切るゴラッソだった。昌平の10番MF山口豪太(3年)はスコアレスの53分、右サイドからスーパーゴールを逆サイドネットに突き刺し、これが全国に導く決勝点となった。
「なかなか自分たちのいつものサッカーができなくて、みんなイライラだったりがあって」という前半。山口自身も「自分と(長)璃喜が外から仕掛けたりができなくて。なんかうまく消されて、誘導されて、ボールを奪われているなって」とフラストレーションの溜まる40分だった。
それでも10番の一振りが試合を引き寄せる。右サイドでボールを持った山口は「絶対に1本振ろうと思っていた」。中3の頃から続くグロインペインで高校では振りすぎると痛みが出ることもあり、なかなか触れない時期もあったが、「1本振って入らなくても、これで流れが変わればいいなと思って振りました」と、左足を思い切り振り切った一発がゴール左隅に突き刺さった。
準決勝の浦和南戦では待ちに待った今季初ゴールをマーク。アシストも記録するなど、チームを勝利に導いた直後には「絶対に決勝は自分が点を取って勝たせます」と意気込みを語っていた。
それには理由がある。3年前の高円宮杯U-15関東大会。前年には中2ながらFC LAVIDAの10番を背負い、全国準優勝に貢献した山口だったが、最終学年で迎えた同大会は全国掛けとなった柏U-15戦で自ら得たPKを決めきれず。チームを全国に連れて行くことができなかった。
「(あの日)決められなかった分、自分が絶対に決めてやるっていうのは昨日の夜からずっと思っていて。そこの強い意志っていうのは、やっぱり「気持ちには引力がある」っていう言葉は代表に行った時に森山(佳郎/元U-17日本代表監督)さんが言っていて。強く思ってやっていた時の方が自分も点が入るなと思って、そこで思い続けたら、今日も入って良かったなと思います」
まさに「強い意志」が引き寄せたゴールだった。これが決勝点となり、昌平は1-0で勝利。LAVIDA時代も含め“自分たちの代”初の全国を掴み取ると試合後にはこみ上げるものがあった。
「(中学時代は)みんなを楽しい舞台に連れて行ってあげられなかったっていうのは、もうすごい自分の中でも心に残っていて……。それを思い出したらマジ試合前に泣きそうになって。でも泣くのは試合が終わって、勝ってからにしようと思って、それで自分が決めて、勝って、もうすぐに辛かった想いとかがもうすごいこみ上げてきて……。今日は勝てて良かったと思います」
中学時代から注目を集めてきた山口もついに高校最終学年に。「ラスト1年っていうところで、LAVIDAからやってきた人たちは6年目、高校から入ってきた子たちは3年目で、みんな変わらない『家族』なので。みんなと最後1年、もうあと半年ぐらいを楽しんで、絶対に全国で昌平の楽しいサッカーを見てもらえるように、そこで自分が勝利に貢献できたらいいなと思います」。最高の『家族』とともに、山口はこの夏、昌平らしいサッカーで再び日本一への道を駆け抜ける。
石黒登(取材・文)