全国高等学校総合体育大会(インターハイ)1回戦 東北学院 vs 浦和西

平成29年度全国高校総体・サッカー競技は29日に宮城県の各地で開幕、1回戦を行なった。30年ぶりの全国出場となった埼玉県第二代表の浦和西高校は開催県代表の東北学院高校と対戦。苦しみながらもスコアレスで迎えた後半9分にMF加藤淳志が先制、同30分にセットプレーから加点すると、相手の反撃を1点に抑えて2ー1で勝利して2回戦進出を決めた。

前半は大舞台の緊張から固さの見られた浦和西。後ろからの配球もいつものように相手ディフェンスラインの背後につけられず。守備陣の押し上げも遅く、間延びした中盤のスペースを自由に使われてしまうなど苦しい時間帯が続く。攻撃においては10番のMF遠藤寛紀がボールをキープした時にゴール前に迫ったが、得点には結びつかないまま0ー0で折り返した。

それでも後半はピッチ内で見事に修正。「監督にはいつも中で話し合えと言われている。ハーフタイムに中で全然しゃべれてないと言われて後半は言葉だけは切らさずにプレーした」とディフェンスリーダーの福世航大。前半フリーとなっていたディフェンス前のスペースについても「下4枚で話し合ってもう一歩もう一歩、1mでも2mでも押し上げられるようにした」ことで改善した。また緊張も抜け、リラックスしたことで前への配球も活き始める。

後半7分には得点を意識したという遠藤のミドルシュートが枠をとらえる。これはキーパーの好守に遭いゴールとはならなかったが、それから2分後の好機を先制点につなげた。後半9分、左サイドのスローインからMF楮本颯にボールが入ると「いつもの流れだったので絶対に来るなと思った」と加藤。楮本のクロスをやや下がりながらうまく頭ですらすと、ボールは相手キーパーの手をかすめてゴールに吸い込まれ、浦和西がついに均衡を破った。

その後は1点を返そうと攻撃に出た相手に対し、そのスペースをついてゴールに迫る回数を増やしていく。浦和西・市原雄心監督も後半23分にFW朝見海斗、26分にFW森喜紀と連続して攻撃的なカードを切って「追加点を狙いに行く!」というメッセージを送り続けた。

すると後半30分に追加点。遠藤の左コーナーキックに反応した森のヘッドはポストに当たったが、その跳ね返りをDFオージ・ヴィクター・シラタが押し込んでみせた。

直後の後半31分にセットプレーから一瞬の隙を突かれて1点返されたものの、すぐさま声をかけあって集中を高め合うと終盤の猛攻をしのぎ切って2ー1で勝利。全国総体初出場時の1987年大会で記録したベスト16を超えるべく、まずは1回戦突破を果たした。

この日は試合開始前から雨が降り続く生憎の天候となったが、実は大会に挑む前にOBの協力もあって荒川総合運動公園で練習を行なっており、その際に雨に濡れた天然芝も経験済み。選手たちも揃って「あの経験が大きかった」と口にし、市原監督は「先輩方が動いてくださって、そういった準備をさせていただいた。そのおかげかな」と語った。30年ぶりの全国勝利の裏には宮城まで駆けつけた応援団の声援も含めて様々な人たちのサポートがあった。

2回戦の相手は全国大会の常連・京都橘高校(京都)に決まったが、強豪相手だからといって戦い方をつもりはない。「絶対にここまで、この大会まではいまのスタイルを絶対に貫けと言ってきた。もうとにかくやってきたことをやるしかない」と市原監督。

この日も前線で収まりどころになりつつも、多くのシュートを放ちチームを勢いづけたエースの遠藤は「名前負けせずに自分たちが革命を起こすくらいの強い気持ちで挑みたい」と語り、声にプレーに後ろから仲間たちを支えた福世は「2試合目なので今日の後半くらいにリラックスして、楽しんでできれば自ずと点が入って勝利につながる」とした。

石黒登(取材・文)

試合結果

東北学院 1-2 浦和西

0(前半)0
1(後半)2