全国高校サッカー選手権埼玉県2次予選1回戦 伊奈学園 vs 入間向陽

14日、選手権予選2次トーナメントが一斉に開幕した。伊奈学園高校グラウンドでも1回戦の2試合が行われ、第1試合は伊奈学園高校と入間向陽高校が対戦。2点のビハインドを跳ね返した入間向陽が3ー2で伊奈学園に勝利し、S1勢を下して2回戦進出を決めた。

試合は開始1分でいきなり動いた。伊奈学園はゴール右斜め前でフリーキックを獲得すると、MF村上拓飛のキックから主将の10番FW齋藤優樹がヘディングで決めて先制する。

前半5分のMF中丸貴也のヘッドはノーゴールの判定となったが、その後も村上を起点に齋藤、MF島田錬らがゴール前に迫ると追加点もセットプレーから。25分、村上の左コーナーキックが相手のオウンゴールを誘って2ー0とリードを広げることに成功した。

対する入間向陽はピッチへの対応に苦戦。雨は試合開始時には上がっていたものの、かなりぬかるんでおり、両軍がロングボールを中心に進める中で「バックラインからのクリアボールで相手は一山越えてクリアできていたが、自分たちは中盤で引っかかってしまっていた」とMF井上修平。前半はなかなか前に運ぶことができずに、2点ビハインドで折り返した。

それでも終始明るい表情でプレーしていた入間向陽。ハーフタイムも「暗い雰囲気ではなかった」(DF宮腰海月主将)という。そんなイレブンに佐藤和彦監督は「後半も黄色いユニフォームに似合うような明るい顔でサッカーをやろう」と声をかけた。「戦術もあるが、気持ちひとつで心が動いて、身体も動く、そういうサッカーがしたい」。そんな意図を持ってかけた言葉だったが、後半はその真意を受け取った選手たちがとびきりの笑顔でピッチを躍動した。

勢いを生んだのは速さ自慢の両翼の投入だ。後半7分、入間向陽はともにスピードに特徴を持つ左サイドハーフの金子蓮、右サイドハーフの小岩井湧斗をピッチに送り出す。「前に前に、裏に裏に」という指示のもと、前半は停滞したチームを加速することを求められてグラウンドに入った2人。すると入るやいなやファーストプレーで大仕事をやってのけた。

後半8分、小岩井のスルーパスに金子が反応。荒れたピッチでエリア内で絶妙に減速したボールに抜け出すと「とにかくゴールという気持ちしかなかった。もう前しか見ていなかった」と背番号9。キーパーとの1対1を制すると、倒れこみながらもゴールに流し込んでみせた。

これで勢いに乗った入間向陽はその後もこの2人が躍動。後半28分には小岩井がキーパーとの1対1を迎えるも相手の好守もあって得点とはならなかったが、その5分後に井上の右コーナーキックからドンピシャのヘディングを突き刺し同点ゴール。ブロック決勝の川口総合高校戦でもやはり頭で得点した小岩井は「ヘッドには運があるのかな」とはにかんだ。

試合はこのまま延長戦に突入。すると延長前半5分に混戦のこぼれ球を「コースは見ていなかった。もう相手に当たってでもいいから入ってくれ」という気持ちだったという井上が左足でシュート。ボールはキーパーに触られたものの、ゴール左下にころころと吸い込まれた。これが決勝点となり、入間向陽が10年ぶりの2次予選初戦を制してベスト32進出を果たした。

S1リーグに所属する伊奈学園を下しての勝利。決勝点を挙げた井上は思わず「ちょっと震えましたね」と振り返った。「周りから見たら結構力の差はあったと思うが、自分たちはそういうことは考えないで絶対に勝つという気持ちでいた」と主将の宮腰。チームは先日閉幕した西部1部リーグで降格が決まったが、そこから見事に立て直しこの日の勝利につなげた。

目標はもうひとつ勝ってベスト16。2回戦で入間向陽は越谷西高校と対戦する。

石黒登(取材・文)

試合結果

伊奈学園 2(延長)3 入間向陽

2(前半)0
0(後半)2
0(延前)1
0(延後)0