第96回全国高等学校サッカー選手権大会 埼玉県1次予選 熊谷工業 vs 深谷第一

選手権埼玉1次予選2回戦が24日に一斉に行われた。深谷第一高校グラウンド第1試合はグループPの熊谷工業高校と深谷第一高校が対戦。試合は後半3分にMF金子拓夢のゴールで先制した熊谷工業が終盤にも加点して2ー0で勝利し、ブロック決勝に駒を進めた。

同地区の高校同士、1年の頃から顔を合わせてきた両雄の一戦。前半はお互いにリスクを避けて、相手の裏に起点を取るサッカーを展開する。序盤から一進一退の攻防が繰り広げられる中で、前半は両チーム合わせて12本(熊谷工業7本、深谷第一5本)のシュートが飛び交ったものの、結局どれもゴールには結びつかずにスコアレスで折り返すこととなった。

前半はタイトに守ってくる相手に対し、なかなか突破口を見出すことができなかった熊谷工業。中盤は相手の圧力に対し押し込まれる場面もあったが、「前がしっかりボールを追ってくれた。ここで踏ん張れば後半にいけると思った」という主将のDF白田翔太郎を中心に全員で声を掛け合いながら0で抑えると、ゲームが動いたのは後半開始早々だった。

開始1分、右サイドの1年生・金子が上げたクロスの混戦から3年生FW剣持翔恩がミドルシュートを放っていくとボールは上に外れたものの、ベンチからは「そのまま続けていけ!」の声が。すると後半3分にこのFCコルージャ先輩、後輩コンビが試合を動かす。

相手の右MFを警戒して左サイドが下がり気味の布陣だったこともあり、やや左目にポジションを取っていた剣持。サイドからドリブルで持ち込むと「1回中に切り返して打とうと思っていたら、相手に当たって良いところにボールがこぼれてきた。中を見たら(金子が)フリーだったのでパスを出しました」。これを1年生MFが冷静に流し込んで均衡を破る。

この1点で勢いに乗った熊谷工業はその後のゲームを掌握。チームのムードメーカーだという剣持が迫力を持ってゴール前に飛び出していくと、攻撃にダイナミズムが生まれ始める。後半36分には追加点。その6分前に金子と交代でピッチに送られたFW大石識仁が上げたクロスのこぼれ玉を10番のMF遠藤海斗がエリア外から低く突き刺して2点差とした。

また守備陣も奮闘を見せる。相手の要注意選手としていたMF笠原拓也にはDF大屋慶佑がエリア内には侵入させないディフェンスでしっかり対応。終盤には警戒していたコーナーキックを連続して浴びたが、ファーサイドに蹴って折り返しを狙ってくる深谷第一に対し、ディフェンス陣、キーパーが慌てることなく守りきり、2ー0の勝利に大きく貢献した。

1月に対戦した新人戦支部準々決勝では追いついてのPK戦負け。「PKも決めれば勝ちという状況で決めきれずに負けてしまった。やっぱり相当悔しい想いをしていた」と熊谷工業・清水渉監督。その悔しさを糧にチームは高校総体予選で26年ぶりの県大会出場を果たした。

久しぶりの県の舞台ではその後ベスト4まで進出した浦和学院高校に初戦で1ー3で敗退。それでも「サイドからパスをつないで、センタリングを上げて、中で叩くというのは結構できた」と右サイドバックの片桐康成。フィジカルやドリブルなど、多くの解題を感じる中で、戦える部分についても再確認した。同試合では前半のうちに3失点を喫し敗れたが、苦しい時間帯でも耐えて後半勝負というこの日の戦い方は強豪相手との勝負で学んだものが生きた。

今年で清水監督が赴任して4年目。当時は7人だったという部員もいまでは62名になった。「苦しい想いもしたからこそ、こういうゲームをしてくれると余計に嬉しい」と指揮官。

インターハイを経て目標は「県大会出場」から「県大会で勝つ!」にアップデートされた。2大会連続の決勝トーナメントがかかるブロック決勝で熊谷工業は草加高校と激突する。

石黒登(取材・文)

試合結果

熊谷工業 2-0 深谷第一

0(前半)0
2(後半)0